医療・福祉の
「現場の今」
がわかるコラム
心理系の仕事といえば「心理カウンセラー」や「スクールカウンセラー」などのカウンセリングの業務がよく知られています。「カウンセラー」という名称自体は、特に法律で定められていないため、資格を持っていなくても、誰でも名乗ることができます。
法律で定められた資格を取得するには、大学の心理学部・大学院など、教育機関での学習が必要な資格には、「臨床心理士」「学校心理士」「認定心理士」などが有名です。 臨床心理士は、公益財団法人が認定する民間資格です。国家資格ではありません。
一方、2017年に「公認心理師法」が施行され、国家資格の「公認心理師」が誕生しました。臨床心理士は国家資格ではないのに対し、公認心理師は国家資格であるため、「臨床心理士」の資格を取得していた人が実務経験を活かし、公認心理師の資格も両方取得しているダブルスタンダードの人が増加しています。
【臨床心理士】
・資格・・・民間資格
・受験資格・・・指定大学院の修了等
・更新制度・・・あり(5年)
【公認心理師】
・資格・・・国家資格
・受験資格・・・指定カリキュラムによる大学卒業かつ大学院の修了
・更新制度・・・なし
公認心理師と臨床心理士の違い
臨床心理士は、指定大学院の修了、もしくは医師免許と2年以上の心理臨床経験が受験資格として求められるなど、高い専門性が要求される資格となっています。
公認心理師との主な違いとしては、公認心理師では「大卒+実務経験のルート」で受験資格が認められるのに対し、臨床心理士では基本的に大学院卒が前提とされること、臨床心理士に資格の更新制度があることなどが挙げられます。
公認心理師は臨床心理士に比べるとまだ新しい資格ですが、臨床心理士の指定大学院は157校(第1種146校・第2種7校・専門職4校)、公認心理師の指定大学院は194校になり、現在(2025年時点)で公認心理師の指定大学院の方が多くなりました。
業務内容にさほど、大きな違いはなく、臨床心理士も公認心理師も、医師のみならず福祉や教育現場など「連携」「協力」のもと業務遂行することには変わりありません。
将来、カウンセラーになるには
将来、専門的な心理系の仕事に就きたいのであれば、認定心理士の資格では不十分ですので、「臨床心理士」か、国家資格である「公認心理師」のどちらかの資格取得をした方がいいでしょう。
実績という点では「臨床心理士」が、国家資格である安心感という点では「公認心理師」が優位だと言えます。実際の仕事内容としてはあまり明確な差がないとも感じますが、臨床心理士の資格を持ちながら、国家資格である「公認心理師」を取得している人が増えているのも事実です。
・臨床心理士 43,083名(2025年9月時点)
・公認心理師 73,678名(2025年9月時点)
何にせよ、どちらの資格も指定大学院の修了が一般的な資格試験受験条件となるので、大学院に進学することができないのであれば、心理系の職業に就くことは非常に厳しいと考えた方がよいでしょう。
今現在、求人数の数、幅広さは「公認心理師」の方が多い傾向にあります。やはり、国家資格であるため、医療機関、福祉施設、教育現場などで求人が豊富です。 特に児童発達支援や放課後児童デイサービスなのでニーズが高まっています。
「臨床心理士・公認心理師」と「精神保健福祉士」の違い
資格の違い
精神保健福祉士と公認心理士師は「国家資格」であるのに対し、臨床心理士は民間資格で、国家資格ではありません。
また、精神保健福祉士は大卒者以外でもなることができ、国家資格なので資格の更新も必要ありません。
【精神保健福祉士】
・資格・・・国家資格
・受験資格・・・①福祉系の4年制大学卒業
②福祉系の3年制大学を卒業+実務経験1年
③福祉系の2年制の専門学校+実務経験2年
・更新制度・・・なし
・精神保健福祉士・・・115,024名(2025年9月時点)
公認心理師は指定科目を置く大学を卒業後、特定の機関で2年間の実務経験を積むか、あるいは指定の科目を持つ大学院に入学・修了する必要があります。臨床心理士は大学院を修了することが求められ、さらに5年ごとに資格の更新も必要となります。
支援する人、活動領域の違い
精神保健福祉士は障がい者と関わりながら、その人たちがより良い生活を送れるようにサポートしていきます。一方、臨床心理士・公認心理師は障がい者に限らず、学校の児童からビジネスパーソン、主婦、高齢者まで多様な人と接し、一人ひとりが社会生活の中で抱える「心の問題」にアプローチします。
仕事内容の違い
精神保健福祉士・臨床心理士・公認心理師のいずれも人の心の問題に関わっていく仕事ですが、精神保健福祉士は臨床心理士や公認心理師のように心の問題だけに特化した深いカウンセリングは行いません。
あくまでも、患者さんが日常生活で困ることがないように「生活環境」のアドバイスやサポートを行っており、具体的には地域で利用できる福祉サービスの情報提供などのケースワーク業務が主となります。
一方、臨床心理士・公認心理師は個々の患者さんと接し、カウンセリングを通して心の問題を解決に導きます。より「心理的」な側面が強いといえるでしょう。
このように、精神保健福祉士、臨床心理士、公認心理師の立場や役割には違いがありますが、実際の医療現場等では両者が関わり合う部分も大きく、お互いに連携し合って患者を支援する機会が多々出てきます。
心の社会復帰の伴走者「精神保健福祉士」
現代の日本は「ストレス社会」と言われ、精神障がいを抱えている人は、1999年には約204万人でしたが、2025年現在は日本全国で603万人となりました。
子どもから大人まで誰もがストレスを抱える時代で、今後も精神疾患を抱えた人は増えていくでしょう。また、65歳未満の方の割合が高く、世界と比較すると日本のうつ病率は低いですが、子ども・10代(10~19歳)の自殺率が高くなってるのは非常に大きな問題です。
学校や家庭の生活環境の問題、子どもの発達障がいなど、医療、保健、そして福祉にまたがる領域で活躍する精神保健福祉士の役割は、ますます高くなっています。
子どもから大人まで、その人らしい暮らしを支援する「精神保健福祉士」。
少しでもご興味があるなら、是非、資格取得の一歩を踏み出してみてください。
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